老いは口から!?オーラル・フレイルって何?
「オーラル・フレイル」という言葉をご存知でしょうか。
「オーラル・フレイル」は「かむ力」や「飲み込む力」などの口の機能の衰えのことをいい、フィジカル・フレイル(*)の1つです。そのため、早期発見と適切な対応をすることで健康な状態に近づけることができます。今回は、この「オーラル・フレイル」について掘り下げて解説していきます。
*フィジカル・フレイル:「身体」の虚弱のことを指す。
食べる力の衰え
オーラル・フレイルの徴候として、「食べこぼしや、軽くむせる頻度が増える」、「かむ力が低下する」など食べる機能のほかに、「滑舌が悪くなる」という変化が現れることもあります。このような徴候の背景にある口の機能の変化について説明していきます。
加齢とともに唾液の量が減少すると、口の中の乾燥を招きます。口の中が乾燥してしまうと、口内の細菌が繁殖しやすくなり、口内炎や歯周病、虫歯になりやすく、口の中の痛みや不快感によって食事がとりにくくなります。さらに、歯周病や虫歯の悪化から歯が抜けてしまうと、かむ力も弱くなり、やわらかいものばかり食べるようになります。そうなると、あごの筋力も衰え、食べ物をしっかりかむことができなくなり、口の機能はどんどん衰えていきます。
また、加齢によってのどや舌の動きが悪くなることで、飲み込む力も衰えます。飲み込む力が衰えると、むせることが多くなり、むせることが辛くて食欲不振に陥ってしまうこともあります。むせやすくなることで、高齢者に多い誤嚥(ごえん)にもつながり、肺炎などの病気になることもあります。
さらに、歯磨きなどの口のケアへの関心、行動が低下することで、歯周病や虫歯が増えるだけではなく、口の中への適度な刺激が減り、口の中の機能はどんどん悪化していきます。
このように口の機能の低下が進むと、食欲が低下して食べる量が減ってしまいます。そして、栄養を十分にとることが難しくなり、最終的には介護が必要な状態に近づいてしまうこともあるのです。
フレイルのうち、このような口の機能の低下の要素を含んだ新たな考え方を「オーラル・フレイル」といいます。次の図1は、高齢者の「口の中の機能から考える介護が必要になるまでの流れ」です。
高齢者と栄養状態
高齢者の栄養状態は、加齢による身体的変化や社会性、経済的問題などにより大きな影響を受けます。次の図2は、高齢者の代表的な低栄養の要因を示したものです。
低栄養の症状には、体重の減少、筋肉量や筋力の低下、感染症にかかりやすくなる、傷が治りにくくなる、下半身や腹部がむくむ、などがあります。高齢者にとってこのような低栄養状態は、寝たきりなどの要介護状態へつながる重大な要因ともなります。
近年は、高齢者の一人暮らし世帯も増えています。また、一緒に暮らしている家族がいても一人で食事をとる「孤食」の高齢者が少なくありません。一人で食事をとることは、食欲を低下させるだけではなく、うつなどの精神的な病気ともかかわりがあるといわれています。また、食事には、ただ食べるという動作だけでなく、買い物などで食材を準備して調理したり、後片付けをしたりとそのほかの動作も必要になってきます。このような毎日3回の食事に必要な行動は、高齢者にとっては大きな負担となる場合があります。そうなると、出来合いのものや簡単な食事で済ませたり、食事をすること自体がおっくうになり食べなくなるなど、栄養状態を悪化させる引き金となったりします。
おわりに
普段何気なく行っている「食べること」は、高齢者にとって「楽しみ」や「生きがい」、そして人とのかかわりを持つ大切な手段の1つとなっています。高齢者の「食べること」を守ることは、超高齢社会が直面する介護予防の課題にも大きな影響をもたらすといわれています。『今まで以上に医科歯科の協働を強め、「しっかりかんで、しっかり食べ、しっかり動く、そして社会参加を」というメッセージ』を広げることが、今後重要になるでしょう。
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