胃がんの基礎知識
胃がんは(上皮内がん、日本人が多くかかるがんです。2016年に新たにがんと診断された人は、99万5,132人でしたを除く)。そのうち胃がんにかかった人は13万4,650人で2番目に多く、男女別でみると男性が9万2,691人で1位、女性が4万1,959人で3位でした。
多くの人が発症する可能性が高い一方で、早期で発見されれば、5年生存率が95.0%と、非常によい治療成績が得られています(注※1)。胃がんは早期発見、適切な治療によって根治(注※2)が可能なケースもあります。また、手術で胃の切除をした場合、後遺症に悩まされることもありますが、多くの人は食事をはじめとするケアをしながら上手に付き合っています。
「もしも胃がんを患ったら・・・?」事前に知っておくと役立つ基礎知識を学んでいきましょう(以下、医師監修による記事です)。
胃がんとは?
胃がんは、まず胃の壁のもっとも内側にある粘膜細胞に発生します。そこでがん細胞は無秩序に増殖していきます。がん細胞が増殖して大きくなるにつれて胃の壁に深くに入り込み、徐々に外側にまでがん細胞が広がっていきます。胃の壁に深くに入り込みはじめると、胃の周辺臓器である大腸や膵(すい)臓に転移しやすくなります。
胃がんの危険因子とは?
胃がんの危険因子の一つにヘリコバクター・ピロリ菌があります(以下、ピロリ菌)。ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌で、炎症の原因となります。慢性胃炎や胃潰瘍の原因になるのはもちろんのこと、細胞にダメージを与えて、胃がんのリスクを高めてしまいます。現在ではピロリ菌を除菌することが胃がんの予防のひとつになると考えられています。
また、塩分の過剰摂取も胃がんの原因となると考えられています。胃の中の食塩濃度が高まると粘膜がダメージを受け、胃炎が発症し、がんを発症するリスクが高まるということがわかってきているからです。減塩は胃がんのリスクを低下させることに繋がります。ほかにも喫煙はがんのリスクとなります。
胃がんの症状と検査について
胃がんは初期の段階ではほとんど症状が現れません。かなり進行してから症状が現れます。胃がんの代表的な症状には以下のようなものがあります。
・胃痛
・胃の不快感・違和感
・胸やけ
・食欲不振
・吐き気
・貧血
・黒色便(上部消化管で出血した場合便が黒色になる)
これらの症状は胃がん特有のものではなく、胃炎や胃潰瘍でもみられるため、ついつい軽視してしまうことがあります。胃がんかどうかは検査をしないとはっきりしないので、このような症状に気づいたら検査を受ける必要があります。ただし症状が出てから検査を受ければいいということではありません。初期の段階で胃がんを見つけるためにも、定期的な検診が重要です。
胃がんの検査で一般的なものは内視鏡を使った検査です。胃の内部を内視鏡を用いて目視で異常がないか観察します。がんと疑わしきものがある場合、その組織を採取して病理検査を行います。その結果により胃がんかどうかが確定診断されます。同様にバリウムを用いた胃X線検査でも病変(病気による生体の変化)の有無を画像で確認することができます。疑わしき病変があった場合、内視鏡検査を追加して組織の一部を採取し、確定診断を行います。
上記の検査で胃がんと診断された場合には、病変の広がりや転移はしていないかなどをCT検査やMRI検査で確認します。
胃がんの治療法とは?
胃がん治療の基本は手術です。近年は身体への負担が少ない腹腔鏡手術の実施も増えてきました。さらに、早期でリンパ節転移の可能性がほとんどないと考えられる場合は内視鏡治療が行われることもあるなど、治療法の進化によりその選択肢は多様化してきています。治療法はがんの進行度や年齢・体力、併存疾患を考慮しながら、患者本人や家族の希望を聞き、医師とともに選択します。「どんな治療が行われているのか」、代表的な治療法について詳しく説明していきます。
胃は、食道と胃をつなぐ胃上部、胃の中心部分である胃中部、胃と十二指腸をつなぐ胃下部に分けることができます。がんが発症しやすいのは胃下部で、多くの人がここでがんが見つかっています。がんができた場所によって手術の切除範囲は異なります。がんができた場所が胃上部の場合は、胃の上のほうを1/3から1/4切除します。胃中部のがんに対しては、がんの周囲を部分切除します。その際にはがんのある部分から2~3cm余裕をとります。胃下部のがんに対しては、胃の下のほうを2/3から4/5切除します。また、がんが広がっている場合には、全摘手術となります。
手術について
1.縮小手術
胃がんの手術は、リンパ節転移が疑われない場合には胃やリンパ節の切除範囲が少ない縮小手術が行われます。胃をできるだけ残すことで、胃切除後の後遺症が起こりにくくなります。
2.定型手術
胃がんはがん細胞がリンパ液の流れに乗り、リンパ節に転移することがあります。早期胃がんの中でもリンパ節転移があるものや、進行胃がん※では定型手術と呼ばれる術式が行われます。胃の2/3以上を切除し、尚且つ、転移を防ぐためリンパ節を切除します。
3.拡大手術
進行胃がんでは、胃だけではなく周辺の臓器(膵臓や脾(ひ)臓、大腸)などへも切除範囲が及ぶ拡大手術が行われることもあります。
胃全摘、胃の入口・出口付近を切除した場合には、胃を補うため、胃と食道、胃と腸をつなぎ合わせる消化管再建術も同時に行います。
※進行胃がん:胃がんが胃壁の筋層という部分まで到達したものを進行胃がんという。胃壁の深いところまで到達したほうが転移のリスクが高くなる。
腹腔鏡下手術と開腹手術
手術にはおなかにメスをいれて腫瘍を切除する開腹手術と、腹部に数か所小さい穴をあけて、そこから専用の器具や内視鏡カメラをいれ切除を行う腹腔鏡下手術があります。
開腹手術はおなかの中がよく見えるので、より安全に手術を行うことができますし、手術時間も腹腔鏡下手術に比べて短いですが、切除範囲が大きい分、患者の身体への負担も大きくなります。
一方、腹腔鏡下手術は開腹部が小さいため体力的な負担は少なく術後の回復も早いことがメリットになります。ただし高度な技術と専門の器具が必要なため、どこの病院でも手術を受けられるわけではありません。また、開腹手術比べ細かい手技が技術的に難しいことから、合併症のリスクが高くなるに可能性も否定できません。
なお胃がんには放射線治療は滅多に行われません。胃がんそのものが放射線治療の効果がでにくく、また大腸や小腸を放射線により損傷してしまうリスクがあるためです。
術後の生活について
胃がんの手術後にはさまざまな合併症が現れます。特に食事に関係する合併症に、胃の切除に伴って起こるダンピング症候群があります。ダンピング症候群とは胃を切除して胃が小さくなったり無くなることで、食べ物が急激に腸に流れ込むことで起こる不快な症状のことをいいます。このうち食後30分以内に起きるものを早期ダンピング症候群、食後2~3時間で起きるものを晩期ダンピング症候群といいます。
【早期ダンピング症候群】
食べ物が腸へ急激に運ばれることで腸の動きが激しくなり、腹痛や下痢、吐き気や嘔吐などの消化器症状のほか、腸から分泌される物質により、全身の血管が広がり冷や汗やめまいなどの症状が出るものです。
【晩期ダンピング症候群】
炭水化物が小腸に急速に流れ込むことで、血糖値が急激に上昇し血糖値を下げるホルモンであるインスリンが過剰に分泌されて、低血糖症状を起こすものです。動悸やめまい、頭痛や冷や汗、だるさなどの症状が現れ、気を失ってしまうこともあります。
このダンピング症候群を予防するためには、管理栄養士などへ相談し食事内容の工夫をすることや食事はゆっくりとよくかんで、腹八分目にするなどを意識することが大切です。また、食事内容や食べ方の工夫をしても症状が改善しないときは、医師へ相談してみましょう。
このほか、逆流症状、腸閉塞などにも注意が必要です。
まとめ
胃がんは進行度合いによって選択できる治療法が異なります。初期の段階で発見することができれば、身体に負担が少ない治療を選択することができます。しかしある程度進行して、胃の大半を切除することになると、日常生活に支障が出てきます。定期的な検診を大事にして早期発見することが何よりも大切です。
もし胃がんで手術の必要があるときは、医師に相談して納得のいく治療法を選択しましょう。治療方針に不安があるならば、担当医とは別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを利用することも有効です。
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