見過ごさないで季節性のうつ
日がどんどん短くなり、寒さが増してくるころになると、これといった理由も思い当たらないのに気持ちが沈みがちになったり、朝、なかなか起きることができなくなったり、無性に食欲がわいたりした経験がある人は大勢いらっしゃるかもしれません。
このような状態が2年以上続き、仕事や家事など日常生活に支障をきたすようなら、それは、もしかしたら秋から冬にかけて症状が現れる「冬季うつ病」によるものかもしれません。
「冬季うつ病」の最大の特徴は過眠と過食
「冬季うつ病」とは、ある一定の季節にだけ「気分が落ち込む」「疲れやすい」「やる気が起きない」などの症状が現れる季節性うつ病(季節性気分障害または季節性情動障害などともいう)と呼ばれる病気のひとつです。ほかに、症例は多くはありませんが「夏季うつ病」があります。
冬季うつ病は、10~12月に症状が出て、翌年の3月ごろになると自然に症状が快復するというサイクルを毎年繰り返すのですが、まだ、病気自体あまり知られていないことや、春になると治ってしまうことなどから、病気と気づかず、つらい症状があるにもかかわらず我慢したり、放置している人が多いといわれています。
冬季うつ病の症状はうつ病の症状とほぼ同じですが、うつ病でよくみられる不眠や食欲低下による体重減少とは逆に、過眠や過食による体重増加という冬季うつ病特有の特徴がみられます。
【冬季うつ病の症状】
・倦怠感
・気力の低下
・過眠(1日に10時間以上寝ても眠くてたまらないなど)
・過食(特に、炭水化物や甘いものが無性に食べたくなる)
・体重増加
実は、冬季うつ病ではなくても、冬になると「眠くて仕方がない」「甘いものが欲しくなる」という人が増えますが、これは、厳しい寒さを乗り切るために、体を休ませようとしたり、エネルギーを蓄えようとしたりするために生理的に起こるものです。
上記の症状が明らかに強く出ていて、日常生活に支障をきたすほどの症状が2年以上続くような場合は、冬季うつ病の可能性があります。精神科、心療内科、神経科などの専門の医療機関を受診することをお勧めします。
日照不足が主な原因
冬季うつ病は、日照時間が深く関係していると考えられています。
人間は、明るい太陽の光を浴びると、目から脳に信号が伝わり、脳内で「脳内神経伝達物質」と呼ばれるセロトニンの作用が増強します。すると、メラトニンというホルモンの分泌が抑制され、体内時計がリセットされます。メラトニンは睡眠と覚醒の生体リズムを調整する働きや体内時計をリセットする働きをもっており、その分泌が抑制されてから約15時間後に再び活発に分泌されて眠気を催します。
ところが、日照不足によってセロトニンの作用が弱いままだと、脳の活動が低下し、メラトニンの分泌の抑制がしっかり行われないため、体が活動モードにスイッチされにくくなり、さらに、睡眠と覚醒のリズムが乱れ、疲れやすい、食欲が抑制できない、気力がなくなり落ち込むなどといった抑うつ状態を促すことになります。
緯度の高い地方の冬は、特に日照時間が短くなるため、冬季うつ病にかかる人の割合も増える傾向があります。また、日当たりの悪い部屋に住んでいる人や、仕事の関係で日光に当たる機会が極端に少ない人は冬ではなくてもかかりやすいといわれています。
冬季うつ病の予防法と治療法
■予防法
冬季うつ病を防ぐには、体内時計が規則正しく作用するような生活習慣を送ることが基本です。
・規則正しい生活をし、朝の光を浴びる
毎日、できるだけ同じ時間に起き、朝の光を浴びること。日中は積極的に日光を浴びることも大切。
・3食規則正しく食事をする
・運動をする
運動すると、脳から抗うつ作用のあるホルモンが分泌されたり、神経の成長を促すことが明らかにされています。ハードなスポーツでなくても、日常生活のなかで適度に体を動かすことです。
・ストレスをためない
自分なりのリラックス法を見つけたり、趣味をもつなど、通常のうつ病対策と同様です。
■治療法
冬季うつ病の治療には、光療法が効果的といわれています。2,500ルクス(一般的な学習スタンドの2~3倍程度)以上の強い光を毎朝、数時間、専用の機械を使って浴びることで改善されると考えられています。
太陽の光は、植物だけではなく、人間の心身の健康にも影響しています。仕事が多忙なため、日が昇る前に出勤し、一日中日の当たらない社内で仕事をし、日が落ちてから帰宅、土日は疲れて外出もせずずっと家で横になっているというような日々を過ごしている人は、冬場でなくとも日照不足による冬季うつ病を引き起こす可能性があります。できるだけ午前中に一度は外に出て、太陽の光をしっかり浴びるようにしたいものです。
保険ワールド 手柄店 阿曽でした。