くらしの中の思わぬ危険 ~やけどの恐怖~
やけどは、日常生活の中で起こるもっとも多いけがのひとつです。
やけどの原因は、やかんやポットのお湯、ストーブやホットプレートに触れるなど、日常生活に関係するものが多く報告されています。また最近では、電気炊飯器などの水蒸気の噴出口や温熱ヒーターの吹き出し口に触れたことによる子どものやけどが増えています。
くらしの中にひそむ思わぬやけどの事故を知り、やけどをしないよう注意しましょう。
やけどとは
やけど(医療用語で「熱傷(ねっしょう)」といいます)は、熱により皮膚や粘膜が傷ついた状態です。
やけどは深さによってI度、II度、III度に分類されます。
応急処置
やけどは応急処置が重要です。
まずはすぐに冷やしましょう。水道水を流しっぱなしにして、やけどをした部分を20分ほど冷やし続けます。冷やすことで熱による皮膚へのダメージが深くならないよう防ぎます。また氷は凍傷のおそれがあるため、使用は避けましょう。やけどの範囲が大きい場合は、浴室のシャワーを使って冷やします。
衣服の上からやけどをしたときは、服を脱がせずそのまま水をかけて冷やします。無理に脱がしてしまうと皮膚が一緒にはがれてしまったり、水ぶくれをやぶってしまうこともあります。水ぶくれがある場合は、やぶけると感染症になりやすいので、やぶらないよう気をつけましょう。感染をおこすと、傷は深くなり、治るまでに時間がかかるだけでなく、傷あとやひきつれなどの後遺症を招くおそれがあります。
やけどの状態によってはすぐに救急車を呼ぶ必要もあります。子どもの場合、やけどの範囲が全身の10%以上ならば、救急車を呼びます。腕1本がおよそ全身の10%、腹部・背部全体ではそれぞれ全身の20%に相当します。
子どものやけど
やけどは、子どものけがでもっとも多いものの一つです。
子どもがやけどをする状況には、子どもの成長と生活している環境が関連しています。また、子どもは大人と比べて皮膚が薄いため、深いやけどになりやすい傾向があります。そのためやけどの原因となるパターンを知り、工夫することで、子どもをやけどから守ることが大切となります。
(1)お湯や汁物などの熱い液体を子どもが手の届く範囲に置かない
お湯や汁物をひっくりかえすことが子どものやけどの大きな原因になっています。子どもは4ヶ月前後よりものに手を伸ばすようになります。テーブルの上のものに興味をもつことで、電気ポットを倒し、熱いお湯を浴びてやけどすることがあります。ひっくり返す危険があるものには注意しましょう。また、たおしても中身がこぼれにくい製品を使うなどの工夫が必要です。
(2)テーブルクロスの使用を控える
テーブルクロスを引っ張って、頭から熱い味噌汁などを浴びたという事故も報告されています。子どもがつかまり立ちをはじめる7ヶ月前後から注意しましょう。
(3)炊飯器やポットなどの蒸気をだすものは、子どもの手が届く高さに置かない
子どもは炊飯器や電気ポットの蒸気に興味を持ち、蒸気に触れてやけどをすることがありますので注意しましょう。
(4)アイロン、グリル付きコンロなどの熱源に子どもが触れないよう注意する
アイロンを使用しているときに注意するのはもちろんですが、使用後も、子どもの手の届かないところに置くことが必要です。また、子どもの身長が70~80cmになると、一般的なコンロのグリル窓に手が届くようになります。グリルの使用中、使用後も、十分にさめるまでは子どもを近づけないようにしましょう。
(5)暖房器具を使う場合は、ストップガードなどを使用する
温風ヒーターの温風に触れたり、ストーブに触れたりしてやけどすることがあります。子どもが直接触れられないように工夫しましょう。
(6)電気コードや電源のソケットに注意する
テーブルの上にある電気ポットなどのコードに引っかかり、電気ポットを倒して熱いお湯を浴びてやけどをすることがあります。そのため電気ポットは、電源コードが外れるタイプのものが安心です。
子どもの行動と行動範囲を大人たちはしっかりと把握して、やけどの原因となるものに触れないように対策することが重要です。
低温やけど
低温やけどとは、心地よいと感じる温度(40℃~50℃程度)のものに長時間皮膚が触れることで起こるやけどをいいます。
低温やけどの原因は、湯たんぽやホットカーペット、温熱ヒーター、カイロなどです。42度の熱におよそ6時間触れ続けると、皮膚の組織が変化するという報告があります。
低温やけどは、じわじわと皮膚の深い部分まで達することが特徴です。低い熱が時間をかけて皮膚の組織を壊していくため、痛みを感じにくく、気づきにくい傾向があります。そのため、気づいたときにはちょっと赤く、ひりひりするくらいですが、そのまま1日ほうっておくと、水ぶくれができている、というケースが多いようです。特に子どもや高齢の方は皮膚がうすい上、やけどをしたことに気づかないこともあり、深いやけどになりやすいので注意が必要です。それほど高くない温度でもやけどをすることを知り、暖房器具やカイロなどの使用にも、注意する必要があります。