「がんゲノム医療」って??
保険ワールドの阿曽です。
ちょっと難しい話ですが、、、「がんゲノム医療」ってお聞きになったことはありますか?
ここ数年、がん医療で注目を集めているのが「がんゲノム医療」です。がん対策基本法に基づいて策定された第3期がん対策推進基本計画(2018年3月9日閣議決定)においても、充実すべき分野として盛り込まれており、全国の拠点・連携病院等での診療体制の整備が進められています。
そこで今回は、がんゲノム医療の基本的な知識と、保険セールスに従事する方々が知っておきたい3つのポイントをまとめてみました。
<< 目次 >>
◆がんゲノム医療とは何か?
◆「遺伝子検査」と「遺伝子パネル検査」の違い
◆知っておくべきポイント(1)~一部の遺伝子パネル検査は先進医療の適用対象~
◆知っておくべきポイント(2)~検査後の治療は「自由診療」となる
◆知っておくべきポイント(3)~遺伝子パネル検査の動向は?
がんゲノム医療とは何か?
そもそも「ゲノム」というのは、遺伝子(gene)と、すべてを意味する(-ome)を合わせた造語で、DNAに含まれる遺伝子情報全体を指します。
「がんゲノム医療」とは、がん患者のゲノム情報を網羅的に調べ、その結果をもとに、より効率的・効果的に診断と治療を行う医療のことです。
つまり、がんゲノム医療を推進させるためには、がん患者の細胞の遺伝子変異(※1)を調べる遺伝子検査が欠かせません。
※1:がん細胞の中の遺伝子がなんらかの原因で後天的に変化すること。あるいは、生まれもった遺伝子の違い。
「遺伝子検査」と「遺伝子パネル検査」の違い
これまでも、遺伝子変異を有する一部のがんには、対応する分子標的薬(※2)の治療効果が高いことが分かっており、保険診療による治療が行われてきました。
例えば、乳がん(HER2遺伝子)や大腸がん(K-ras遺伝子、RAS遺伝子)、肺がん(EGFR 遺伝子、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子)などです。
これらの遺伝子変異を標的とする分子標的薬は、1つのがんに1つしか存在しない関係にあると考えられています。
そのため、対象となる遺伝子変異を見つけ、それに対応する薬剤を使用すれば、高い治療効果が見込めるとともに、患者さんにとってもムダな治療を行わずに済むわけです。
しかし、これらの遺伝子検査は1回の検査で1つあるいはいくつかの遺伝子変異を調べるもので、がんの種類も限定されています。
それに対して、「遺伝子パネル検査」は、1回の検査で、多数の遺伝子変異を網羅的に解析することができるのです。
※2:がん細胞の増殖や転移に関わる特定の分子に作用する新しいタイプの薬剤のこと。
知っておくべきポイント(1)~一部の遺伝子パネル検査は先進医療の適用対象~
遺伝子パネル検査は、数年前から全国の大学病院などで実施されてきましたが、基本的に自由診療の扱いでした。そのため、検査を受ける前のセカンドオピニオン費用で約1~4万円、検査費用で約50~100万円超がかかります(医療機関によって異なる)。
それが、2018年4月から、国立がん研究センター中央病院の「NCCオンコパネル」が初めて先進医療Bとして承認されたのです。
その後、同年8月から東京大学病院の「東大オンコパネル」が、同年10月から大阪大学病院「OncomineTargetTest」が先進医療として認められています(【図表1】参照)。
ですから、お客さまが遺伝子パネル検査を希望されている場合、保険契約に先進医療特約が付加されているか、その検査が先進医療に該当するかどうかの確認が必要です。
先進医療は随時見直しされるものですが、とくに遺伝子パネル検査については、こまめにチェックすることをお勧めします。
知っておくべきポイント(2)~検査後の治療は「自由診療」となる
続いてポイントの2つ目は、検査を受けた後についてです。
まず注意しておきたいのは、高額な費用をかけて検査を受けたとしても、がんの診断や治療に有用な情報が何も得られない可能性があること。
これまでの遺伝子パネル検査の研究によると、遺伝子変異が発見された患者は約半数で、実際に治療薬を利用できる患者は10%程度だといいます。
というのも、検査の結果、遺伝子変異が見つかったとしても、そのがんに対して保険承認されていない場合、薬剤が入手できない、あるいは投与できない可能性があるためです。
また、参加できる臨床試験や治験等がなかったり、全身状態が悪化したりといった理由から、検査結果に結びつく治療選択ができない患者が大半を占めます。
なかでも、費用負担に関する問題は大きいでしょう。
検査後の治療に関しては、現時点では原則として保険適用はありません。仮に、自由診療で未承認薬による治療を行う場合、概算で月額100万円、1年継続すると1,200万円以上の患者負担がかかります。
そこで、2018年11月中旬に行われた「患者申出療養評価会議」において、患者申出療養のしくみを利用して、未承認薬にアクセスできる環境を整備することが承認されました。患者申出療養は、2016年4月からスタートしている患者からの申し出を起点とした保険外併用療養費の一つです。先進医療と同じく混合診療が認められていますので、自由診療よりも費用負担は軽減されるでしょう。今のところ、開始は来年5月あるいは6月となる見込みです。
一般的に、がん保険等に付帯されている抗がん剤治療特約は、対象となる薬剤が、保険適用薬あるいは薬事承認薬と規定されており、給付の範囲や上限等が各社で異なります。
がん保険の中には、患者申出療養を対象とした商品(特約含む)や、保険診療や先進医療、自由診療も含め、がん治療にかか
る実際の費用を補償する実損填補型の商品もありますが、いずれにせよ、このような治療を受けた場合、みなさんが取扱っておられる保険商品の保障が給付対象となるのか、事前に確認しておいてください。
知っておくべきポイント(3)~遺伝子パネル検査の動向は?
最後に、ポイントの3つ目は、今後の動向についてです。
がんゲノム医療の実用化に向けて、2018年2月、厚生労働省では、中心となる「がんゲノム医療中核拠点病院」11施設を選定。
同年3月には中核拠点病院と連携してがんゲノム医療を行う「がんゲノム医療連携病院」100施設(2018年10月135施設)が発表されています(【図表2】参照)。
また、将来の治療開発に向けたデータ収集を目的に、同年6月、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)が開設されるなど、全国の医療機関での診療体制の整備が着実に進められています。
一連の報道では、2019年4月以降、遺伝子パネル検査が保険適用になる予定で、それが実現すれば、希望するがん患者は約20~30万円(3割負担の場合)で検査が受けられるようになるはずです。
ただし、保険適用になるのが遺伝子パネル検査だけなのか、その後の治療まで含むのか、どの遺伝子パネル検査が対象になるのか、対象となるがん患者の要件はどうかなどは、未定です。
しかしながら、現時点でも、遺伝子パネル検査の対象となっているのは、治療法がないなど希少がんや原発不明がん、標準治療が終了し、次の新たな薬物療法を希望するがん患者など。希望するがん患者すべてが検査を受けられるわけではありません。
仮に、遺伝子パネル検査が保険適用になった場合、受けたいと希望するがん患者は確実に増えるでしょう。しかし、遺伝子パネル検査については、費用負担の大きさも含め、期待できることと同時に限界もあることをきちんとお伝えすべきだと考えています。
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